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店舗デザインの『ディレクション業務』とは? 2019.04.02

 弊社ではご契約の際に「設計料」以外に「ディレクション料」を頂いています。ディレクションとは直訳すると「1.指導、管理、監督 2.方向、方角 3.傾向、目的」となります。では店舗デザインにおけるディレクション業務とはいったい何でしょうか?
 
 多くの人がコンセプトやイメージを決める人、全ての方向性を定める人だと思っていますが、ほとんどの場合、そこを担うべきは施主自身であり、弊社も含めたデザイナー(もしくはディレクター)が勝手にそこを決められるものではありません。なぜならその後の店舗運営の責任を負うのは施主自身なのですから、施主自身がその方向性に納得してこそ初めて「ゴール」と定まるのです。
 
 もちろんその「ゴール」自体はとても重要ですから、私たちも空間や店舗の知識や経験を持ち、ブランディングを認識し、イメージを具体的に描ける専門家として、施主に助言し、その空間をイメージし易いよう資料を作成、必要に応じてスケッチやレイアウトのご協力も致します。もちろんその作業も「ディレクション」の一部ですが、あくまでそこはディレクションのごく一部だと捉えています(おそらく一般的に呼ばれている「ディレクター」の仕事はこの部分です)。
 
 ときとして私たちが導いた方向性がそのまま「コンセプト(ゴール)」に定まることも有りますが、それはただそれだけのことであって「そのゴールで行こう!」と最終的に決めるのはあくまで施主自身です(上記のディレクションの和訳における「3.方向、方角」にあたります)。
 
 僕自身は「コンセプト」とはあくまで最初に決めるべき「ゴール(方向、方角)」でしかなく、そこを決めることでその後の店舗完成までに関わる様々な人々がブレなく一つの方向に向かう為の「ツール」としか思っていません。もちろんそれ自体は店舗完成後の運営に大きく影響しますし、それが無ければ全員が同じ方向を向けないのでとても重要ですが、そこの決断は施主が担っていますので、私たちがその責任を負うことはありません。
 
 むしろ、店舗デザインにおいて私たちが同じくらい重要だと考えているもう一つの「ディレクション業務」は、コンセプト決定後〜店舗完成までの全ての「過程」の管理であり、最終的にそのゴールにきちんと導くことです。
 
 店舗が完成に至るまでに、施主や施工会社、そして私たち設計者以外にも様々な業種の方々と話し合い、協力を仰ぎ、協力し合い、物事や金額を決め、工事を経て、最終的に店舗は完成に至ります。例えば◯◯ディレクター、グラフィックデザイナー、ファッションデザイナー、スタイリスト、素材メーカー、什器制作会社、植栽の専門家、職人… 多種多様な業種や肩書きの方々が一つの店舗の完成に関わります。そこを滞りなく円滑に、定めた「ゴール」に導くのが弊社が最も重要視する「ディレクション業務」です。
 
 その「ディレクション」の作業を自分なりに日本語に言い換えれば、店舗が完成するまでの「舵取り」だと思っています(つまり上記のディレクションの和訳の「1.指導、管理、監督」に当たると思っています)。様々な業種や立場の方々とのコミュニケーションの中心となって舵取りをすることに弊社がきちんと責任を持つことで、物事は円滑に回り、滞りなく店舗の完成に至ります。
 
 一つのプロジェクトがよく「航海」に例えられます。店舗デザインにおいてはその向かうべき方向を定めるのは「施主」ですが、その方向性を助言し、その後の舵取りを担うのが「ディレクター」であるべきだと僕は思っています。
 
 言い換えれば、コンセプトも、デザインも、スケジュール管理も、予算組みも、VEの提案も… 別に誰がやっても良いのです。ただし、そこにどこか漏れが生じたり、やるべき人がそれを怠ることで滞る状況を、こちらはきちんと把握し指摘し、場合によっては弊社がそこを担って、きちんとゴールに辿り着くように全てをバックアップすること、それが弊社が「デザイン&設計」以外で担っている「ディレクション」という業務です。