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デザイン料への誤解 2016.03.23

 デザイン料に関して未だに何か「誤解」が有るように感じています。そして、その「誤解」は根深いなあとも。そんな訳で自分が思うデザイン料への認識を一度ここに書いておこうと思います。
 
 僕らはデザインを通して、クライアントの求めるお店を具現化します。言い換えれば、クライアントの「お金」をクライアントの望む「お店」に転換すべく僕らは仕事をしています。その仕事量への対価として「作業料」を頂いています。それがつまり「デザイン料」です。
 
 未だにデザイン料をデザインの意匠権や著作権(※)として支払っていると思われている感が根強くあるようにも感じますが、それはむしろデザイナー各々のデザイン性や経験、価値観への付加価値の金額差であり、料金そのものは「作業料」です。(※著作権は存在します。それが問われるのはクライアントがデザインを無許可で転用しようとした場合です。)
 
 そしてその「デザイン料の増減」の基準は店舗の場合、面積です。面積が広ければ考えることも増え、スケッチも増え、CGパースも増え、図面も増え、交渉内容も増えますので、必然的に作業も増えます。その為、基本的には面積に応じてデザイン料(設計料)は増減します。ただし、お話しを伺って作業的にそれほど時間のかからないご依頼だと判断できれば弊社ではデザイン料を安くも致します。
 
「クライアント ⇄ デザイナー ⇄ 施工会社」
 
 次にここにデザイナーがいないことを一度想像してみて下さい。そもそも「図面の通りにお店を作ること」が施工会社に課せられた使命であり仕事です。図面になるまでの一連の作業は担っていません。そこを担っているのがデザイナーです。
 
 僕らはクライアントからお店のイメージを聞き、出店場所や希望の予算でできる最適な方法やデザインを考えます。お店の方向性が定まっていなければディレクションもします。その上でそのデザインを可視化できるように「スケッチ」を描いたり「CGパース」に起こしたり「コラージュ」を作ったり。そして施工会社にお店を作ってもらう為に必要となる「説明書=図面」を書きます。それを元に施工会社から出てきた「施工見積書」が正当かもきちんと確認しますし、金額に誤りが有れば指摘もします。
 
 そして予算的に本当に必要なことは何か、優先すべきことは何かを僕らはアドバイスします。金額が予算をオーバーしていればもちろん減額案も提示します。作るべきものの優先順位を提示し、どこまで具現化することがよりそのお店にとって効果的かのアドバイスもします。必要があれば施工会社との契約内容も確認します。施工に入ればそのクオリティーもチェックしますし、図面と異なれば作り直しも指示します。全てのスケジュールも管理します。
 
 さて、ここで質問です。
 
 設計も施工も一社が担っている場合(クライアントが施工会社に設計も併せて依頼する場合もこれと同じです)、上記の一連の作業を彼らは本当に「快く」出来るでしょうか?プライオリティ重視の減額案を提示できるでしょうか?また、自分の作った製作物が図面と異なっていた際に「進んで」それを指摘できるでしょうか?彼らにとって、施工費こそが「売上げ」です。本当に快くできますか?
 
 しかし施工費と自分たちの売上げ(報酬)が直結しないデザイナーにはそれができます。むしろそこを指摘する為にも施工費とは直結しない形で「デザイン料」を頂いています。これ以上はここについては触れませんが、この一連の作業を別の会社が担うことの大切さに気づいて頂くことがクライアントにとっては最も重要なことなのだと思っています。
 
 このように、デザイナーとはクライアントと施工会社との間の「通訳(橋渡し)」の役割を担っています。クライアントが施工会社にお店を作ってもらう際に、その要望やイメージを正確に伝える為に。
 
 そしてクライアントにとっての「コンサルタント」でも有るとも思っています。クライアントが支払うお金を使うべきところに正当に、最適に使ってもらう為に。要らないところにお金を掛けないように。そして目標の売上げを達成するお店を実現する為に。
 
 さらに言ってしまうと、クライアントにとっての「弁護士」にも成りうるとも。「クライアント ⇄ 施工会社」の関係では生じうる様々な問題を無くす為に。そして施工会社にも気持ちよく円滑に作業を進めて頂く為に。
 
 それらすべての仕事への対価として僕らが頂いているのが「デザイン料」です。
 
 とは言え、デザイン料のボリュームが分からないとその価値の検証もできないとも思いますので、本来は施工費とは直結はしませんが(面積に応じた『基準設計料表』に基づいて算出します)目安としてお伝えしますと、弊社の「デザイン料」は施工費に対して10%程度の金額です。店舗全体を施工した場合、施工費比率で10%を超えることはまず有り得ません。
 
 そこに価値を感じてくれる人がデザイナーにデザインを依頼してくれれば良いのだと、いつも思っています。